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骨粗しょう症は、骨強度が低下し、骨折しやすくなる骨の病気です。骨粗しょう症になると、鬆(す)が入ったように骨の中がスカスカの状態になり、骨がもろくなってしまいます。その結果、わずかな衝撃でも骨折をしやすくなります。
骨粗しょう症は、がんや脳卒中、心筋梗塞のようにそれ自体が生命をおびやかす病気ではありませんが、骨粗しょう症による骨折から、要介護状態になる人は少なくありません。その状態になると、QOL(生活の質)は著しく低下してしまいます。
生涯を健康で充実した状態で過ごすためには、血圧やコレステロール値を気にするように骨強度にも気をかけ、定期的に検診を受けたいものです。
健康な骨
密度が高く丈夫 |
骨粗しょう症の骨
内部がスカスカでもろい |
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出典 : 浜松医科大学 井上哲郎 名誉教授
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骨粗しょう症といえば、骨密度が低下して骨折しやすくなる病気として知られています。そのため、予防にあたっては「骨密度」を中心に考えられていました。
しかし最近の研究から、骨密度がある程度保たれていても骨折するタイプの骨粗しょう症があることが分かり、その原因を調べると、人によって「骨質(こつしつ)」に違いがあることが明らかになって来たのです。
そこで、骨粗しょう症の定義は「骨強度が低下し、骨折しやすくなる骨の病気」とあらためられ、「骨強度」には骨密度が70%、「骨質」が30%関係していると説明されるようになりました。
つまり骨粗しょう症は、骨密度の低下と骨質の劣化、その両方が影響しあって骨折リスクが高まる病気といえます。
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硬い骨がどうしてスカスカの状態になるのでしょうか。
それは骨の成り立ちと関係があります。骨は一度できあがってしまうと、その後変わらないもののように思われがちですが、実は古くなり劣化した骨はメンテナンスされて新しい骨へと生まれ変わっているのです。これが骨の新陳代謝です。また、「骨のリモデリング(骨改変)」ともいいます。
骨のリモデリングは、古くなった骨を溶かす破骨細胞と、新しい骨をつくる骨芽細胞の働きによって営まれています。破骨細胞が骨を溶かすことを骨吸収、骨芽細胞が新しい骨をつくることを骨形成といいます。
骨吸収が数週間続いたあと、数カ月にわたって骨形成が行われ、溶けた部分に新しい骨が埋められていきます。
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| 破骨細胞が古くなった骨を溶かしていきます。 |
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次に、骨芽細胞が溶けたところに新しい骨をつくっていきます。
このように骨のリモデリングが正常な場合、骨の新陳代謝は骨の健康を保つのに役立ちます。 |
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女性は閉経後、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が急速に減少します。
エストロゲンの分泌量が減ると骨吸収が異常に高まり、骨形成が追いつかなくなります。つまり、骨吸収によって溶けてしまった部分を新しい骨で埋めることが間に合わなくなり、スカスカの状態の骨になってしまうのです。( 原因へ)

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| 骨のリモデリングがアンバランスになり、破骨細胞の働きが強くなると、破骨細胞によって溶かされる骨の量が増えてしまいます。 |
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| 一方、骨芽細胞の働きは変わりませんので、破骨細胞によって溶かされた部分を埋め尽くすことはできなくなり、スカスカのもろい骨となってしまうのです。 |
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閉経後の女性に骨粗しょう症が多いのはそのためです。下のグラフでもわかるように骨粗しょう症の患者さんは男性に比べて圧倒的に女性に多く、その数は3倍ともいわれています。(原因へ)
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骨の新陳代謝のバランスを整えることが骨粗しょう症対策のポイントです。
骨のリモデリングには、副甲状腺ホルモン、活性型ビタミンD、カルシトニン、エストロゲン(女性ホルモン)/アンドロゲン(男性ホルモン)、グルココルチコイド(副腎皮質から分泌されるステロイド系ホルモン)などの物質が深くかかわっています。
活性型ビタミンD3製剤、カルシトニン製剤、エストロゲンは、骨粗しょう症のお薬としても用いられます。( 治療と目的へ)
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「骨」というとカルシウムを連想しがちですが、骨の体積の50%は、コラーゲンです。
仮に骨を鉄筋コンクリートの建物だとすると、カルシウムはコンクリートで、コラーゲンはコンクリート内に埋まっている鉄筋となります。
そして鉄筋(コラーゲン)の強さを左右するのは、鉄筋(コラーゲン)同士をつなぎとめるコラーゲン架橋で、これはいわば梁(はり)の役目として、建物全体の強さにまで影響を及ぼしているのです。
さらに、このコラーゲン架橋には「善玉架橋」と「悪玉架橋」があり、悪玉架橋が増加すると、コラーゲンからしなやかさが失われ、硬くてももろい、折れやすい状態となってしまいます。
悪玉架橋は加齢とともに増えるほか、糖尿病や慢性腎臓病などの生活習慣病によっても増えることが分かっています。( 第65回コラムへ)こうした生活習慣病の患者さんでは、骨質が劣化している可能性が高いため、骨密度検査で正常に近い結果が出ても安心してはいけません ※。
※骨質が劣化しているかどうかは、血液・尿検査で特定の物質を調べることが有効とする研究が進んでいますが、まだ一般化されていません。
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骨粗しょう症のもっとも重大な合併症は骨折です。骨粗しょう症による骨折は、高齢化に伴う骨粗しょう症の患者数の増加とともに増えています。
とくに骨折しやすいのは、椎体、大腿骨近位部、橈骨(とうこつ)、上腕骨です。なかでも大腿骨近位部を骨折すると、その後歩行が困難になり、結果要介護状態になる人もいるため、骨折の予防対策は急務となっています。
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骨粗しょう症の治療の目的は、骨折予防です。骨粗しょう症による骨折を減らし、健康寿命を延ばすことがもっとも重視されています。
骨折と深く結びついている要素には、「骨密度の低下」「骨質の劣化」「転倒など外からかかる力(外力)」があります。骨折しやすいかどうかを判定するには、骨密度測定とともに、骨質と外力に影響する因子も考えなくてはいけません。
骨折を誘発しやすい因子として考えられているものは次の通りです。
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女性、高齢者 |
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男性よりも女性のほうが骨折リスクが高い(原因へ)。 同じ骨密度の場合、年齢が高いほど骨折リスクが高い。
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骨密度が低い |
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骨密度が低いと骨折リスクが高い。 |
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過去に骨折したことがある |
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男女とも、過去に骨折したことがあると将来の骨折リスクは2倍。 すでに椎体骨折がある場合は、将来の椎体骨折は4倍に高まる。 |
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たばこを吸っている |
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喫煙者は非喫煙者に比べて骨密度が低いだけでなく、同じ骨密度でも現在喫煙している人の骨折リスクは非喫煙者の約1.3〜1.8倍高い。 |
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過度のアルコール摂取 |
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1日3単位以上飲酒している人は、骨折リスクが1.4〜1.7倍高い。 |
| □ |
ステロイド剤を使用 |
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リウマチなどの治療でステロイド剤(副腎皮質ホルモン剤)を長期使用することにより骨折リスクは約2〜4倍に高まる。
*病気の治療でステロイド剤が処方された場合は、担当医から十分な説明を受け、指示にしたがって服用しましょう。ステロイド剤による治療は、骨粗しょう症対策を含め十分な管理のもとで行わなくてはいけません。一方、自己判断による急な中止は危険を伴うこともありますので避けてください。
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過去に家族が骨折したことがある |
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親が大腿骨骨折をしていると骨折リスクは2.3倍になる。 その他の骨折では1.2〜1.5倍高い。 |
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運動不足 |
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適度な運動(活発な身体活動、日常生活活動)は、骨粗しょう症による骨折リスクを20〜30%、最大50%予防する効果があることから、運動不足は、骨折を惹起しやすい因子と考えられる(治療と目的へ)。 |
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転倒しやすい |
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大腿骨近位部骨折はほとんどが転倒によって起こる。 転倒の危険因子には、転倒回数が多い、全身衰弱、マヒ、筋力低下、睡眠薬の服用、視力低下などが報告されている。 |
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骨吸収マーカーが高い値 |
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骨吸収マーカーが高い値を示す人では、骨折リスクが高い(第9回コラムへ)。 |
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低体重 |
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体格指数(BMI)が低いと骨密度が低下する。
低体重(やせ)は大腿骨近位部骨折の危険因子となる(転倒時に骨に大きな体力が加わるため)。
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カルシウムの摂取量が少ない |
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カルシウム摂取量が少ないと骨量が低下する(第4回コラムへ)。 |
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これら骨折を惹起しやすい因子には、過去の骨折歴や家族の骨折歴など自分の努力をもっても、取り除くことができないものがあります。一方、たばこやアルコールを控えたり、カルシウムを積極的に摂取したり、適度な運動を行うなど生活習慣を改善することで骨密度の低下を防止し、ひいては骨折の予防につなげることができます。生活習慣の改善は家族歴での骨折し易さに優る効果がみられます。
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今後、ますます高齢化が進むことが予測されています。それに伴い、骨粗しょう症の患者数も増加していくと考えられます。一生涯を健康に送るために、骨粗しょう症とは何かを知り、骨粗しょう症になったとしても骨折しないために適切な治療を受け、骨によい食事や運動を心がけましょう。
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