骨粗しょう症 トピックス 【 Vol.8 】

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骨の健康に影響する生活習慣病(3)

〜高血圧・脂質異常症

2017年6月10日

カルシウムが不足すると骨が弱くなるだけでなく血圧も上がる

健診で「血圧が高め」と指摘されたことがある人は多いでしょう。実際、日本人で高血圧の人は約4千万人(全人口の1/3)とも推定されています。
高血圧は、慢性的に血管に高い圧力がかかる状態のことで、そのままにしておくと、血管壁は徐々に厚くなり、弾力性も失われ硬くなってゆきます(動脈硬化)。高血圧自体に自覚症状がほとんどないため見落とされがちですが、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞など、命に関わる重大な病気を招くことがあります。
さらに最近では、高血圧と骨粗しょう症との間に密接な関係があることもわかっています。






体の中のカルシウムのほとんどは骨や歯をつくるために固くなった状態で存在しますが、体内で溶けた状態の微量なカルシウムは神経の伝達や筋肉の収縮など、命を維持する上で重要な役割を担っています。そのため、血液中のカルシウムは常に一定に保たれており、食事から摂るカルシウムが不足すると、骨に蓄えられたカルシウムが血液中に溶け出て補おうとします。
しかし、カルシウム摂取の不足が続き、骨のカルシウムが血液中にどんどん放出される状態が続くと、骨がもろくなるのと反対に、一時的に血液中のカルシウム濃度が増えすぎてしまうという現象が生じます。そして、血液中の余ったカルシウムは血管平滑筋という筋肉の細胞の中に入り込み、血管を収縮させます。その結果、血圧が上がって高血圧が生じます。

また、カルシウムには血液中のナトリウムを体外に排泄する働きがありますが、カルシウム不足により血中のナトリウム濃度が高くなると、血圧が高くなることが知られています。
反対に、高血圧の原因となる塩分の摂り過ぎは、カルシウムを尿中に排泄する作用を強めるので、カルシウム不足を助長させます。このように、骨粗しょう症と高血圧は、互いに影響し合って病気を進めていくのです。

高血圧の半数の人は自分が高血圧であることを自覚していません。また、高血圧であることがわかっていても、治療を受けている人は4分の1程度とされます。「血圧が高め」と指摘されたら、食生活や運動習慣を見直して、早めの改善をこころがけましょう。

血液がドロドロになって骨代謝にも影響を及ぼす脂質異常症

脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が異常に増えた状態で、過食や運動不足、お酒の飲み過ぎなどによって引き起こされます。脂質異常症が生じると、通常はサラサラのはずの血液が、脂が増えてドロドロの状態になります。すると、血液中に増え過ぎたコレステロールなどの脂質が血管壁にたまって、動脈硬化を促進します。
脂質異常症が進むと、下肢の血流が悪くなって、しびれや冷え、痛みが現れる閉塞性動脈硬化症や、胆汁に含まれるコレステロールが増加して生じる胆石、激しい腹痛が起こる急性膵炎などが生じやすくなります。また、骨の代謝にも影響を及ぼして、骨質を低下させます。
脂質異常症は、高血圧や糖尿病などの他の生活習慣病と合併することが多い病気です。それぞれが軽度でも、複数重なると動脈硬化の進行が早くなり、心筋梗塞や脳梗塞につながることもあるので注意が必要です。