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骨粗しょう症コラム

2016年3月18日

第107回 実は若い人にも多い骨粗しょう症予備軍

骨粗しょう症で心配されることはなんですか?


骨には生活習慣が現れる

骨粗しょう症は高齢者に多い病気ですが(>第106回コラム)、加齢や閉経のように避けられない理由ばかりでなく、食生活の偏り、運動不足、飲酒・喫煙などといった、日常の過ごし方が影響して年齢よりも早く骨密度を低下させてしまうことがあります。
また、現代では高齢者というにはまだ若い中高年者にも糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、高血圧、脂質異常症などにかかっている人が増えています。これらの生活習慣病に伴って、骨粗しょう症や骨折が生じやすくなるのは、病気に伴う運動不足や過剰な食事制限が影響しているからだろうと推測されていました。しかし最近、生活習慣病と骨粗しょう症は共通した原因で発病し、生活習慣病の治療が骨折予防にも役立つことが明らかになってきています。 たとえば、糖尿病は「インスリン」というホルモンの作用が低下することで、エネルギー源として取り入れられた血液中のブドウ糖が処理しきれなくなり、高血糖の状態が続く病気です。この「インスリンの作用不足」や「高血糖の状態」が、骨の質に悪影響をもたらして、骨を弱くすることが分かってきたのです。したがって、若い人や中高年者でも糖尿病にかかりますと骨粗しょう症予備軍になってしまいます。

私がリハビリテーション医になった当初、糖尿病にかかられた50歳代の弁護士さんを診させて頂いたことがあります。肥満の糖尿病患者さんは、血糖値コントロールのために減量を必要とすることが多いのですが、奥様が治療の手助けにと厳格な食事制限をされた結果、糖尿病治療薬の内服は必要なもののスマートな体形を手に入れることができました。体が軽くなったことで気分も良くなり、弁護士活動に一層熱が入っていたそうです。ところがある日、裁判所で沢山の書類を包んだ風呂敷包みを持ち上げて振り向いた途端、腰からギクッと音が鳴り、激痛のためうずくまってしまったのです。弁護士さんを背中から診察しますと、腰骨の一部が後方に突出して強い痛みが生じており、レントゲン像などから第1腰椎圧迫骨折と診断しました。しかし、腕の骨の骨密度は50歳代男性の平均値近くを維持しており、骨密度の低下はみられませんでした。このように糖尿病では、骨密度が正常値であっても骨折が生じやすくなります。

こんな病気があると骨粗しょう症になりやすい

以前より関節リウマチでは骨密度が低く、一般の人の2倍も骨粗しょう症にかかりやすく、1.3〜2.4倍も骨折しやすいことが知られていました。さらに、約30年前ごろから、より正確な骨密度測定法(>第99回コラム)が普及されるとともに、その他の多くの病気でも骨粗しょう症にかかりやすいことが分かってきました。

糖尿病の約95%を占める2型糖尿病の患者さんは、肥満により骨に体重の負荷がかかる分、骨密度は高い傾向にあります。しかし、骨をつくる細胞(骨芽細胞)の働きが悪くなったり、高血糖の状態が続くと骨質に悪影響を及ぼす物質(終末糖化産物)が増えるので、前述の弁護士さんのように骨折しやすくなります。
慢性腎臓病(CKD)では、腎臓の働きが悪くなることで、カルシウム吸収を促すビタミンDをつくる力が弱くなります。すると、血液中の不足したカルシウムを調整するために、骨のカルシウムを溶かして補おうとするので、結果的に骨折しやすくなります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、長年の喫煙歴が主な原因となる生活習慣病です。喫煙者の割合が高い男性に多く、慢性的な息切れや咳、痰などの症状から運動が困難になり、胃腸の働きが弱くなります。また、治療で用いられるステロイド薬が骨折リスクを高めます。
さらに、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を放っておくと、動脈硬化を進行させてしまうので注意が必要です。動脈硬化は、血管の弾力性が失われたり、血管壁が厚くなるなどして血液の流れが滞ってしまう状態のことですが、発症や進行において骨粗しょう症と共通する部分があります。たとえば、有害な活性酸素が生じると、血管が硬く傷つきやすくなるとともに、骨を壊す破骨細胞が増えて骨は弱くなることが分かっています。(>原因「続発性骨粗しょう症 生活習慣病関連骨粗しょう症」
このように生活習慣病の患者さんでは、骨粗しょう症・骨折が生じやすくなっていますので、もともとの病気の治療とともに骨の健康管理にも十分留意してください。


骨粗しょう症予備軍かチェックしよう ―当てはまったら予防や医療機関の受診を

骨粗しょう症を疑うチェック項目としては、@「背中が丸くなってきた」、A「身長が低くなった」、B「背中や腰に痛みが生じた」があげられます。この3項目に該当すれば既に背骨の骨折が生じて骨粗しょう症にかっていることになりますので、早めに医療機関を受診するようにしてください。
また、現在は骨粗しょう症とまではいかなくても、将来骨粗しょう症になる可能性が高い予備軍の方も増えています。下の表で当てはまる項目がないかチェックしてみましょう。


骨粗しょう症予備軍となる10項目のうち、閉経、加齢、家族歴などを除けば、食事、運動、飲酒・喫煙は自分の努力で改善することができます。やせ過ぎの方は体重を増やして標準体重に近づけてください。また、生活習慣病による骨粗しょう症の合併を防ぐには、生活習慣病をしっかりコントロールすることが重要になります。
該当する項目が多く改善が難しい場合は、医療機関を受診して正しい診断と治療を受けましょう。毎日の努力で骨粗しょう症予備軍から遠ざかった体にして健康長寿を達成してください。






いつも骨粗しょう症サイト【いいほね.jp】をご覧いただきありがとうございます。
2007年11月より毎月掲載してまいりました「骨粗しょう症コラム」ですが、 第107回(2016年3月)をもって終了することとなりました。長きに渡り多くの皆様にご愛読いただき深く感謝申し上げます。
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